- 親がやることは3つです。選択肢を見せる。お金の線引きを先に伝える。決まったあとは手を出さない
- うまくいかない家庭に共通するのは、熱意でもお金でもありません。親が全部やってしまうことです
- 台湾留学を最初に見つけてくるのは、8割が親です。それでいいです。ただし、本人が興味を持った瞬間から主役を交代してください
- 面談には必ず親子で来てください。子どもだけ、あるいは親だけがやる気でも、この進路は続きません

台湾留学のサポートを仕事にしている僕が、保護者の方に向けて書きます。
弊社は年間100名以上を台湾へ送り出しています。これまでに受けた進路相談は1,000件を超えました。そして今年、送り出した生徒のお父さん・お母さん15家庭に、1時間ずつ話を聞いてきました。何が心配だったか。どこで気持ちが変わったか。何をして、何をしなかったか。
その15家庭を並べて分かったことがあります。うまくいく家庭とそうでない家庭を分けるのは、熱意でもお金でもありません。親が子どもと関わる距離です。
これは説明会では話しきれない部分です。だから全部書きます。
親がやることは3つだけです

1. 選択肢を見せる
福岡のあるお父さんが、こう言っていました。
僕たちが生きてきた時代と今の時代は圧倒的に違っていて、2年後3年後5年後のことが分からない世の中になっている。親として子どもにサポートできることは、ほぼないと思っているんです。いろんな選択肢を見せてあげることぐらいしか、親にはできない。その中で子どもが選んだことを、頑張れと言うくらい。
このお父さんは、息子さんが「経営者になるから大学のイメージはない」と言ったとき、否定せずに東京のベンチャー経営者5人に会わせています。答えを与えるのではなく、材料を増やした。台湾はそのあとに家族の話題として出てきました。
親にできるのは、子どもが自分で選べるように選択肢を増やすことです。選んであげることではありません。
2. お金の線引きを先に伝える
これは早ければ早いほどいいです。
「学費はうちが出す。生活費で足りない分は奨学金かアルバイトで自分で埋めなさい」。この分担が、実際にいちばん多い形です。ある家庭は「支援できる金額には限りがある」と正直に伝えたうえで、その範囲で行ける国を数カ国に絞って本人に提示していました。
金額を曖昧にしたまま進めると、必ず後で揉めます。沖縄のシングルマザーのお母さんは、娘さんが台湾で奨学金の申請に一度落ちたとき、「奨学金が取れないくらいなら帰ってきたほうがいいんじゃない」と言ってしまいました。そこから娘さんは連絡を絶ち、大喧嘩になっています。
しまった、最初の言葉を間違えたなと思ったんですが、本人はもう「帰ってきたほうがいい」しか頭に入っていないので、一切返信が来なくなってしまって。
このあと娘さんは学費全額免除の奨学金つきで国立大学に合格し、その報告で仲直りしました。結果は良かった。ただ、この喧嘩は金額と条件を先に共有しておけば起きなかったものです。
お金の話は、費用の全体像を書いた記事と、保護者向けに資金計画だけをまとめた記事にあります。数字はそちらで確認してください。
3. 決まったあとは手を出さない
弊社がサポートを始めるとき、保護者の方に必ず最初にお願いしていることがあります。
「出願書類の準備も、質問も、基本的に生徒本人にさせてください」
台湾留学は、完全に親元を離れて自立するということです。出願の書類集めでつまずく子が、渡航後に一人で履修登録や病院や銀行を乗り切れるはずがありません。準備期間そのものが訓練です。
親として気になることがあれば、「これを聞いておいてね」と子どもに伝えてください。子どもから僕たちスタッフに連絡が来ます。長崎のお母さんは、この形を徹底していました。
私はもう本当のノータッチで、私が分からないことも、私が直接聞いてもいいんですけど、娘を通して聞いてもらいました。それも一つの社会勉強になるので。
一番うまくいかないのは、親が全部やってしまう家庭です
はっきり言います。これが一番危険です。
説明会に親だけが来て、面談にも親だけが来て、「子どもにはまだ話していません」という状態。この家庭は、ほぼ間違いなく進みません。本人の中で何も始まっていないからです。
逆のパターンもあります。子どもが全部自分で調べて進めていて、親が一度も説明会に来ていない家庭です。この場合、親は台湾留学の中身も費用も安全性も知らないまま判断することになります。そして「危ないからやめておきなさい」で終わる。調べていないから、それ以外に言いようがないんです。
だから面談には必ず親子でお越しください。将来に関わる決断です。お互いが何を考えているかを、その場で確認してほしい。
僕たちのサポートでは、スタッフ・生徒本人・保護者の3人が入るチャットグループを作ります。親御さんは子どもがちゃんと進めている様子を見られるので不安になりすぎません。何かあれば親御さんが直接スタッフとやり取りすることもできます。沖縄のお母さんは、この距離感をこう言っていました。
出願の準備は全然本人に任せていました。ただ、チャットの内容はチェックはしていたんです。私は何のことかよく分からないので、本人がスタッフの方とやり取りしながら自分で進めていってくれたのかなと。
見えるけれど、手は出さない。これが一番いい距離です。

入口は親でいいんです。8割がそうです
「親が見つけて子どもに勧めるのは、押しつけではないか」と気にされる方がいます。気にしなくていいです。
弊社に来る家庭の体感8割は、親御さんが「こういうのどう?」と紹介するところから始まっています。子どもは、親の言うことには意外と素直に耳を傾けます。「親に言われたから一緒に説明会に参加してみた。それなら自分でもいいかもと思って、自分で調べるようになった」。この流れが一番多い。
沖縄のあるお母さんは、学校経由で届いた台湾留学のチラシを一度ゴミ箱に捨てています。息子さんが「興味ない」と言ったからです。その後、たまたま参加した講演会で日本経済の現状を突きつけられ、帰宅してゴミ箱からチラシを拾い直し、その場で説明会を申し込みました。息子さんは今、台湾の大学で全英語の経営学プログラムに進んでいます。
別のお母さんは、進路相談で娘さんが語学系大学の資料ばかり持ってきたときに、こう言ったそうです。
3年間ほかの人より語学を中心に学んだのに、また4年間語学を学んで、あなたは何になりたいの。それ、塾に行くのと何が違うの。趣味じゃないの。
娘さんには嫌な顔をされたそうです。でもこの問いのおかげで、この家庭は「語学を学ぶ」から「語学で何を学ぶか」に視点が移りました。台湾なら、中国語と英語で専門を学べる。娘さんは国立大学の幼児教育学部に、奨学金つきで進学しています。
入口をつくるのは親でいい。ただし、本人が興味を持った瞬間から主役を交代してください。
保護者の心配トップ3に、先に答えます

安全と台湾有事
15家庭に聞いて、一番多かった心配がこれです。そして面白いことに、複数のお母さん・お父さんが、まったく別々に同じ結論にたどり着いていました。
一番は台湾有事でした。ニュースも前より目が行くようになって。でも、起こってから考えようと。起こってもいないことを心配してもしょうがないし、もし日本の大学を選んで県外に出ていたとして、そこでどんな事故に遭うか、震災とか、いろいろあるじゃないですか。だからどこにいても同じかなって。
僕の答えも同じです。日本にいたって地震や台風はあります。確率の低いことばかり考えて行動しないのは、あまりにもったいない。そして本当に危なくなったときのために、僕たちがいます。現地にスタッフがいて、電話一本で動きます。
不安を消す必要はありません。あるお母さんは、こう言っていました。
政治的な問題は個人でどうにかできる範疇ではないので、何かあった場合に台湾ではどういう体制になっているんだろう、と調べてみたんです。安心できる材料は自分で結構見つけることができたので、解消はできないけれど、かなり小さくはなりました。
外務省の危険情報、日本台湾交流協会の体制、台湾の犯罪統計、日本との距離。判断に使える公的なデータは揃っています。数字と出典は保護者向けの安全の記事にまとめました。
授業についていけるか、卒業できるか
正直に言います。どんなに語学ができても、1年目は授業についていけません。
日本の大学に入っても、専門用語だらけの授業は最初ついていけないはずです。それを外国語でやるのだから、難しいのは当たり前です。僕自身、1年目に取れた単位は8単位でした。卒業に必要なのは128単位です。
大事なのはその先です。2年目、3年目と真面目に受けていれば、要は慣れなので、絶対についていけるようになります。台湾の大学はテストの点数だけでなく、プレゼンも出席率も見てくれます。僕は授業で一番前に座って「日本人だから難しいんです」とアピールして、点数に色をつけてもらっていました。そういうコミュニケーション能力も、自然と伸びます。
そもそも辞める人は多くありません。そして辞めてしまう子は、ほとんどが1年目です。理由もはっきりしています。親に「浪人は絶対ダメだから、とりあえず入れそうな大学に行っておけ」と言われて来た子です。本人が納得していない。明確な目標がない。だから続きません。
続く子には共通点が2つあります。「1年目は難しくてついていけないものだ」と割り切って真面目に授業を聞けること。そして、親子でしっかり納得したうえで、明確な意志を持って来ていること。2つ目は、親御さんの側の問題です。
卒業後の就職
これもよく聞かれます。断言します。有利です。
英語と中国語ができて、専門スキルもある。日本の大学に通えば楽なのに、わざわざその環境を捨てて厳しい環境に飛び込み、4年間で価値観を広げ、コミュニケーション能力も身につけた人を、企業が欲しがらないわけがありません。
日本の大学に通った場合を想像してみてください。卒業するときには、みんな横並びです。就活の面接で話す内容も似たり寄ったりで、少し盛るくらいのことしかできない。入るのは難しくても、入ってしまえば大半はアルバイトかサークルです。比べものになりません。
台湾の大学を出た日本人の進路は、メガバンク、大手メーカー、Microsoft や Google のような外資系IT、TSMC など幅広く実例があります。就職先は日本が圧倒的に多いです。台湾は初任給が日本人でも15万〜20万円ほどで、給与水準が低いためです。日本で就職すれば新卒枠や海外大生枠が使えますし、日本の外資系に入って台湾へ駐在するルートを選ぶ人も多くいます。この場合は日本の給与に駐在手当が乗ります。
進路の詳細は卒業後の進路の記事に書きました。
決める前に、反対しそうな人を全員書き出してください
ここが、この記事で一番重要なところです。
個別相談のあとに話が流れたケースを調べ直したことがあります。5件すべてが同じ原因でした。面談の場にいなかった人が、あとから反対したんです。お父さん、おじいさん、学校の先生、主治医。その場にいなかった人が、情報を持たないまま結論だけを聞かされて、反対する。
だから僕は面談の最後に必ず聞きます。「ご家族以外に、相談される方はいらっしゃいますか」と。
ご家庭でも、決める前に紙に書き出してください。頭の中だけでやらないでください。
- この進路の最終判断に関わる人を、全員書く(本人・両親・祖父母・学校の先生・主治医など、名前を書ける人すべて)
- その一人ひとりが何を心配しそうかを、隣に書く(お金、安全、就職、健康、世間体)
- その心配に答えられる材料が今あるか、○か×を書く
×が付いた人には、決める前に情報を渡してください。反対する親御さんや祖父母を、僕はたくさん見てきました。ただ、頭ごなしに子どもの挑戦を全否定する人は、ほとんどいません。反対の中身は必ず、費用・生活・本当にやっていけるのかという不安です。不安なら、消し方があります。
反対されている当事者の方に向けては、別の記事に書きました。
よくある質問
高校3年生の夏からでも間に合いますか
間に合います。台湾の大学の出願は日本の高校を卒業した後の冬から春が本番なので、高3の夏に始めれば語学の準備に半年以上取れます。実際にそのスケジュールで、奨学金つきで合格した生徒がいます。詳しい流れは進学ロードマップの記事にまとめました。
子どもが本気なのか、どうやって見分ければいいですか
長崎のお母さんの答えが、そのまま答えになっていると思います。「ここまでは自分でやろうね、という約束をしながら、それを守ってやってくれたので、こっちも覚悟を決められました」。約束を決めて、守れるかを見る。言葉ではなく、行動で測ってください。
親が台湾のことも入試のことも分かりません。それでも大丈夫ですか
大丈夫です。むしろ「私は分からないから、そこはサポートできない」と本人にはっきり伝えているご家庭のほうが、子どもが自分で動きます。実務は僕たちが引き受けます。
短期のサマーキャンプから始めたほうがいいですか
迷っているなら、そのほうがいいです。15家庭のうち10家庭が、短期を先に通してから正規留学を決めています。食べ物、匂い、生活のテンポ。合うかどうかは、行ってみないと分かりません。合わなければ、そこで別の道を選べます。一度も台湾に行かないまま渡航するのが1年目でつまずく最大の原因だということは、後悔する人の共通点を書いた記事に詳しく書きました。
子どもが「台湾に行きたい」と言い出しましたが、正直まだ反対です
反対の理由を、具体的な言葉にしてみてください。費用なのか、安全なのか、就職なのか、それとも寂しさなのか。ほとんどの場合、答えのある不安です。判断材料が足りないだけなら、僕たちが全部お出しします。
最後に
決めるのは本人です。それでも、背中を押す人がいるかどうかで結果は変わります。
15家庭に共通していたのは、心配がなくなったから応援したのではない、ということでした。心配を抱えたまま、それでも応援すると決めていました。沖縄のお父さんの言葉がすべてだと思います。
親と子どもが繋がっていても、全く違う考え方や価値観があります。それは当たり前のことでもあるので、本人がどう生きていきたいのか、どんな人になっていきたいのかを中心に置くと、非常に良い決断ができるんじゃないかなと、自分に言い聞かせています。
僕自身、高校3年生のときに「台湾に行く」と言って、先生には「行って後悔するよ」とまで言われました。周りは台湾を知らないのだから仕方ありません。4年間通い切った今、当時の同級生から「自分も行っておけばよかった」と言われます。
迷ったまま止まってしまうのが、一番もったいないです。
まだ何も決めていない段階でかまいません。お子さんと一緒に、話を聞きに来てください。
