「台湾スピーク」という、台湾の中国語(台湾華語)を発音から学べるアプリを作りました。2026 年 6 月 1 日に App Store で公開して、4 か月たったいまの数字です(10 月 4 日時点)。
- App Store の「台湾華語」で検索 1 位
- 「繁体字」「台湾 会話」でも検索 1 位
- 評価は 182 件、平均は 5 点満点で 4.80

このアプリは、僕が 1 人で作りました。
ただ、僕は台湾留学のエージェントを経営していますが、エンジニアとしての知識は全くのゼロです。コードは一文字も書いていません。全部 AI に書いてもらいました。
じゃあ、AI を使ったから簡単にポンと作れたのか。まったくそんなことはありませんでした。公開の翌日に、アプリが落ちて使えないという連絡が来ました。発音の採点は、1 か月近く壊れたままでした。公開から 1 か月たっても、有料の機能にお金を払ってくれた人は 0 人でした。
どこでつまずいて、そのたびに何をしたのか。コードが書けない僕がやっていた 4 つのことを、起きた順に書きます。
なぜエンジニアとしての知識が全くゼロの僕が、発音のアプリを作ったのか
うちの生徒は、台湾の大学に入るために中国語を勉強しています。授業も、文法の動画も、単語帳もあります。足りなかったのは、発音の練習でした。
中国語で一番難しくて、一番大事なのは発音です。同じ「マー」でも、音の上がり下がりが違えば「お母さん」にも「馬」にもなります。この上がり下がりを声調といいます。ところが授業の外では、声に出して練習しても、合っているかどうかを誰も教えてくれません。
アプリも探しました。発音がだいたい合っているかを採点するものはあっても、声調まで見てくれるものは見つかりませんでした。
ないなら、作ってみよう。そう決めたのが 2026 年 4 月です。
僕がやったのは、AI に日本語で注文することです
家を建てるときの注文に近いです。僕は釘を打てませんが、どんな家に住みたいかは言えます。画面のどこが使いにくいか、どの単語の音声が違うか。気づいたことを日本語で送ると、Claude という AI がコードを書き直します。4 月から送ったメッセージは、500 通を超えました。
作り始めて 8 日で、生徒に配りました
最初に配ったのは、うちの生徒だけでした。授業の外で、発音だけを練習するためのアプリです。

直したいところが残っているのは、分かっていました。それでも、まず使ってもらって、みんながつまずく場所から直す。そう決めて、良いところと使いづらいところを教えてほしい、とお願いしました。
返事はその日のうちに来ました。最初のドリルが 69 問は多すぎる。台湾の方からは、アプリの声調が正しくないと指摘されました。
ここには学びがありました。69 問を一気に解かせると、いつまでも終わらない感じがして、達成感が出ません。達成感がないと、続けられません。その日の夜にまず 20 問へ減らし、そこからレベルを分けて、もっと小分けにしていきました。ゲームのように、続けたくなる仕組みを意識するようになったのは、ここからです。
声調でも、気づいたことがあります。AI で作ると、どうしても中国大陸の中国語の声調に引っ張られてしまうんです。台湾で実際に使われている声調に、一つ一つ直していきました。
誰でも使えるアプリにするために、カリキュラムをゼロから作りました
生徒の声を聞いて直していくうちに、もっといろんな人に使ってもらえるアプリにしたい、と思うようになりました。5 月には、生徒ではない方から、使いたいという問い合わせが届きました。
ただ、生徒用のアプリは、授業を受けている人のための、発音に特化したものです。授業を受けていない人には、それだけでは学べません。
それに、生徒用のアプリは、台湾で広く使われている台湾華語の教科書をもとに作っていました。一般に公開してお金をいただくとなったら、丸写しはダメです。
ほかの語学アプリのように、アプリだけで学習が完結する形にする。単語も、文法も、発音も、会話も、順番に学べるようにする。そのためには、カリキュラムをゼロから作るしかありませんでした。1 人で教科書を 1 冊作るようなものです。そんなことができるのか、正直迷いました。
台湾華語に特化したアプリは、ほとんどありませんでした
カリキュラムをゼロから作るのと並んで、一番の大前提にしたことがあります。台湾華語に特化することです。
台湾の中国語を学びたい人はいるのに、学べるアプリがほとんどありません。たとえば一番大手の Duolingo でも中国語は学べますが、使われているのは中国大陸の漢字、簡体字です。台湾では、画数の多い繁体字を使います。
台湾スピークは、発音も台湾の発音、漢字も繁体字です。台湾の中国語だけを学べるように、そこをめちゃくちゃ意識して作りました。載せる表現は、この 5 年で 200 人を超える生徒が、台湾で実際に必要になったものから選んでいます。
「台湾華語」や「繁体字」の検索で 1 位になり、ここまで受け入れてもらえているのも、この大前提があったからだと思っています。
やっと公開した翌日、「クラッシュして使えない」と連絡が来ました
5 月だけで、アプリへの変更は 190 回を超えます。そうして迎えた 6 月 1 日、Apple の審査(App Store に並べる前の確認)を通り、その日のうちに公開しました。審査を通ったという通知を見たときは、めちゃくちゃ嬉しかったです。コードも書けない自分のアプリが、App Store に並んでいる。最初は信じられませんでした。すぐにスタッフと友人に伝えて、Instagram でも、ぜひ使ってみてくださいと知らせました。
翌日は、台湾への出張でした。飛行機の中は Wi-Fi がつながらず、空港に着いてスマホを開くと、友人から連絡が入っていました。
「ダウンロードしたけどクラッシュして使えない」
最初のレッスンの 1 問目で録音ボタンを押すと、アプリが突然閉じてしまう。App Store にも同じ不具合を書いたレビューが届き、評価は星 1 や星 2 ばかりでした。
ぜひ使ってみてください、と知らせたばかりです。ダウンロードしてくれた人が、最初の 1 問目で使えなくなっている。終わった、と思いました。
台湾スピークには、無料で使える範囲と有料の機能があります。落ちるのは、無料で使っている人でした。僕のアカウントは有料の状態だったので、公開する前に気づけなかったんです。
すぐ友人に電話して、詳しい状況を聞きました。その日は通訳の仕事が入っていて、合間に状況を AI に伝えて、その日のうちに修正版を Apple の審査へ出しました。そのあと「じゃあ僕のアカウントフリーにして」と送り、無料の人と同じ状態にして、落ちないことを自分で確かめました。
直したつもりで、採点を 1 か月近く壊していました
修正版を出したあと、今度は発音の採点が壊れました。正しく発音しても、0 点に近い点数しか出ないんです。
きっかけは、落ちる不具合の修正でした。そのとき AI が、正しく動いていた録音の部分まで書き換えていたんです。そこを元に戻しても直らず、本当の原因にたどり着いたのは 6 月の終わりでした。録音した音声の種類を取り違えたまま、採点に渡していたんです。直すと、同じ音声の点数が 12 点から 94 点に戻りました。
6 月の 1 か月で、採点と録音のまわりの修正は 7 回になりました。直す場所のほかは変えない。AI に頼むときの決まりにしました。
有料が 0 人だった理由は、記録の中にありました
7 月の初めに数えると、登録した人は 230 人あまり、有料の機能を 14 日間無料で使えるお試しを始めた人は 45 人、お金を払った人は 0 人でした。
プロが作ったわけでもないアプリに、お金を払う人がいない。そりゃそうだ、と思いました。でも、せっかく作ったんです。どうしたら払いたいと思ってもらえるのか。
思いつく理由を書き出して、アプリに残っている利用の記録と突き合わせました。6 月にお試しを始めた人の 84% は、お試しの 14 日間が、採点の壊れていた時期と重なっていました。採点が直ったのは 6 月の終わりなので、正しく動く採点でお試しの 14 日間を終えた人は、7 月の初めの時点でまだ 1 人もいなかったんです。
無料と有料で何が違うのかも、画面から伝わっていませんでした。値段は、購入の画面を開くまで見えませんでした。そこで、お試しを始める画面に、支払い方法の登録が要らないことと、14 日たつと自動で無料に戻ることを書きました。無料で採点した結果の画面には、有料だと何が分かるのかを出すようにしました。
7 月 7 日の朝、最初の 1 人が月額のプランに入ってくれました。
50 件あればと思っていた評価が、182 件になりました
半年後に評価が 50 件あれば、というのは、生徒に配った 4 月に思っていた数字です。7 月の終わりは、まだ 33 件でした。

厳しい声も届きました。6 月についた星 1 つのレビューの題名は、「なぜか初心者レベルからしか始められない」でした。メールでも、アプリの中の意見欄でも、同じ声が続きました。9 月の版で、始める位置を自分で選べるようにしています。
7 月の終わりから 2 か月あまりで、評価は 149 件増えました。名前も知らない、会ったこともない、向こうも僕を知らない。そういう人が使ってみて、App Store のレビューに「これを待ってた」と書いてくれる。本当に嬉しいんです。
コードが書けなくても、できた 4 つのこと
振り返ると、僕がやっていたのは 4 つです。
- 使う人に早く見せて、返ってきた声から直す
- 使う人と同じ状態で、自分で試す
- 直す場所のほかは変えない
- 理由は見当で決めず、記録で確かめる
どれも、コードが書けなくてもできることでした。
最終的な目標は、台湾華語を学ぶアプリとして、誰もが知るアプリにすることです。そして、このアプリを使って「中国語が実際に話せるようになりました」と言ってくれる人を、もっとどんどん増やしていきたいです。
そのために、これからも同じように、みんなのレビューや話を聞いて、より良いアプリにしていきたいと思っています。
台湾スピークは App Store から無料で始められます。有料の機能も 14 日間は無料で試せて、支払い方法の登録は要りません。つまずいたところがあれば、アプリの「ご意見・ご要望」から教えてください。僕が直接読んでいます。

